状況に合わせて使い分ける!問題解決フレームワーク5選【ケーススタディ付き実践ガイド】
問題解決は、正しい道具選びから始まります
新しい業務やプロジェクトに日々向き合う中で、「何から手をつければ良いか分からない」「どうすれば論理的に考えられるのだろうか」と感じることはありませんでしょうか。目の前の課題に対して、経験や勘だけでは適切な解決策を見つけ出すのが難しい場面もあるかもしれません。
このような時に役立つのが、「問題解決フレームワーク」です。フレームワークとは、複雑な問題を整理し、分析し、解決策を導き出すための「思考の型」や「進め方の道筋」を示すものです。これを活用することで、誰でも体系的に問題解決に取り組むことができるようになります。
問題解決フレームワークを使う最大のメリットは、以下の3点にあります。
- 思考の整理と構造化: 問題の全体像を把握し、要素間の関係性を整理できます。
- 漏れなくダブりなく分析: 特定の視点に偏らず、多角的に原因や解決策を検討できます。
- 関係者との共通認識: 議論の土台ができ、スムーズな意思決定につながります。
本記事では、数ある問題解決フレームワークの中から、特にビジネスシーンで役立つ代表的な5つを厳選し、それぞれの基本的な使い方から、具体的なビジネス事例を通じた「使い分け」のヒントまでを分かりやすく解説します。今日からあなたの業務で活かせる実践的な知識を身につけていきましょう。
業務で役立つ問題解決フレームワーク5選
ここでは、幅広いビジネスシーンで活用できる代表的なフレームワークを5つご紹介します。それぞれの概要、使い方、事例、利点・欠点を見ていきましょう。
1. ロジックツリー(Logic Tree)
概要と目的
ロジックツリーは、一つの大きな問題を要素に分解し、木のような枝分かれの構造で表現するフレームワークです。問題を細分化することで、複雑な課題の全体像を把握したり、原因を深掘りしたり、解決策を網羅的に洗い出したりすることができます。
どのような問題解決に適しているか
- 問題の分解・構造化: 複雑で漠然とした問題を分かりやすく整理したい場合。
- 原因特定: 特定の事象が発生した原因を漏れなく探したい場合。
- 解決策の検討: 考えられる全ての解決策を網羅的に洗い出したい場合。
具体的な使い方・実践ステップ
図解を想定した分かりやすい手順です。
- 解決したい問題を特定する: ツリーの「幹」となる、最も上位の課題を明確に定義します。(例:売上が目標を達成できていない)
- 問題を要素に分解する: 特定した問題を、いくつかの下位要素に分解します。この時、「漏れなく、ダブりなく(MECE:Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive)」を意識すると効果的です。(例:売上=顧客数×購入単価)
- さらに要素を分解する: 分解した下位要素を、さらに詳細な要素に分解していきます。これを問題の根本的な要素まで繰り返します。(例:顧客数=新規顧客数+既存顧客数、購入単価=商品単価×購入点数)
- 構造を視覚化する: 各要素を線でつなぎ、ツリー状に図示します。
- 分析または検討を行う: 作成したロジックツリーを用いて、どこに根本原因があるのかを分析したり、各要素に対する解決策を検討したりします。
ビジネスシーンでの活用事例
事例:Webサービスのリテンション率(顧客維持率)向上
事業開発担当として、担当サービスのリテンション率が低下しているという課題に取り組むケースを想定します。
- 問題: リテンション率が目標を下回っている。
- 分解: リテンション率を構成する要素に分解します。(例:リテンション率 = (特定の期間末のユーザー数 / 特定の期間初めのユーザー数) - 新規獲得ユーザー数 + 再アクティブ化ユーザー数)しかし、この分解では原因特定や解決策検討がしにくいため、以下のようにユーザー行動フェーズで分解します。
- リテンション率が低い = 離脱率が高い
- 離脱率が高い原因は?
- 新規ユーザーが早期に離脱する
- 既存ユーザーの利用頻度が低下する
- さらに分解:
- 新規ユーザーが早期に離脱する原因? → オンボーディングの不備、機能理解の不足、初期体験の悪さ など
- 既存ユーザーの利用頻度が低下する原因? → サービスへの飽き、競合への流出、バグ・不具合、利用価値の低下 など
- ツリー化: これらの要素をツリー状に整理します。
- 分析・検討: 作成したツリーを基に、「オンボーディングの完了率」「バグ報告数」「競合サービスの価格動向」などのデータを分析し、特に影響の大きいと思われる枝葉に焦点を当て、具体的な改善策(例:オンボーディングチュートリアルの改善、バグ修正の優先順位付け)を検討します。
利点・欠点・注意点
- 利点: 複雑な問題を構造化し、全体像を把握しやすい。原因特定や解決策検討の抜け漏れを防ぎやすい。
- 欠点: 正しく分解するにはMECEの考え方が必要で、慣れが必要。ツリーが複雑になりすぎると扱いにくくなる。
- 注意点: 分解の粒度を適切に定めること。目的(原因特定か、解決策検討か)によって分解の仕方が変わる場合があります。
2. SWOT分析(Strength, Weakness, Opportunity, Threat Analysis)
概要と目的
SWOT分析は、ビジネスの現状を「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つの要素に分けて分析するフレームワークです。自社の内部環境(強み・弱み)と外部環境(機会・脅威)を整理し、戦略立案や課題解決の方向性を見出すために使用されます。
どのような問題解決に適しているか
- 戦略立案: 新規事業の検討、マーケティング戦略の策定など。
- 状況分析: 自社を取り巻く環境や競合との位置関係を把握したい場合。
- 課題特定: 内部の課題や外部からの影響を整理し、優先順位をつけたい場合。
具体的な使い方・実践ステップ
以下の4つの要素について情報を収集し、整理します。
- 強み(Strength): 自社や自身の組織が持っている、競合他社にはない優位な点や得意なこと。(例:高度な技術力、強力なブランド力、優秀な人材)
- 弱み(Weakness): 自社や自身の組織が持っている、劣っている点や改善すべき点。(例:資金不足、マーケティング経験の不足、古いシステム)
- 機会(Opportunity): 外部環境における、自社にとって有利に働く可能性のある動向や変化。(例:市場の成長、新しい法規制による追い風、競合の撤退)
- 脅威(Threat): 外部環境における、自社にとって不利に働く可能性のある動向や変化。(例:競合の新規参入、技術の陳腐化、景気悪化)
SWOTの各要素を洗い出した後、さらにクロス分析(機会と強みを組み合わせる、脅威と弱みを組み合わせるなど)を行うことで、より具体的な戦略や課題解決策を導き出すことができます。
ビジネスシーンでの活用事例
事例:新規Webサービスの市場導入戦略
事業開発担当として、新しいWebサービスを市場に投入する際の戦略を検討するケースを想定します。
SWOTの各要素を以下のように洗い出しました。
- 強み: 競合にはない独自の技術基盤、迅速な開発体制
- 弱み: 認知度が低い、マーケティング予算が限られている
- 機会: ターゲット市場が急速に拡大している、リモートワーク普及によるニーズ増加
- 脅威: 大手競合が類似サービスの開発を発表、個人情報保護規制の強化
これを基にクロス分析を行います。
- 機会×強み(SO戦略): 拡大市場において独自の技術を活用し、競合より早く新機能をリリースすることでシェアを獲得する。
- 脅威×弱み(WT戦略): 大手競合の参入前に認知度を上げる必要があるが、マーケティング予算が限られている。⇒口コミやSNSを活用した低コストなPR戦略を検討する。
このように、SWOT分析を通じて現状を多角的に把握し、取るべき戦略や対応すべき課題を明確にすることができます。
利点・欠点・注意点
- 利点: 比較的容易に始められる。内部・外部の両面から現状を整理できるため、広い視野で課題や機会を捉えられる。
- 欠点: 分析結果が抽象的になりやすい。クロス分析をしないと具体的な行動に繋がりにくい場合がある。
- 注意点: 主観的な評価にならないよう、客観的なデータや事実に基づいて分析すること。分析自体が目的化しないよう、必ずその後の戦略や課題解決に繋げること。
3. 特性要因図(Fishbone Diagram / Ishikawa Diagram)
概要と目的
特性要因図は、特定の結果(問題、特性)に対して、それがどのような原因(要因)によって引き起こされているかを体系的に整理し、根本原因を探るためのフレームワークです。その形状から「魚の骨」に例えられます。
どのような問題解決に適しているか
- 原因究明: 特定の事象や問題が発生した根本的な原因を深く探りたい場合。
- 問題の構造化: 関係性の複雑な原因を整理し、視覚的に把握したい場合。
- チームでの議論: 関係者間で原因に関する共通認識を作りながら議論を進めたい場合。
具体的な使い方・実践ステップ
「4M+1E」や「5M」といった切り口で原因を整理することが一般的です。
- 解決したい問題(特性)を特定する: 図の「魚の頭」となる、原因を探りたい結果を明確に定義します。(例:顧客からのクレーム件数が増加した)
- 大骨を設定する: 原因を分類するための「大骨」をいくつか設定します。製造業では「4M」(Man:人、Machine:機械、Material:材料、Method:方法)がよく使われますが、サービス業や事務部門など、対象に応じて「5M」(4MにMeasurement:測定/情報 を加える)や「4P」(Policies:方針、Procedures:手順、People:人、Plant:設備)、「4S」(Surroundings:環境、Supplier:供給者、System:システム、Skill:スキル)など、適切な分類軸を設定します。(例:顧客クレームの原因として「人」「プロセス」「システム」「情報」など)
- 中骨を設定する: 各大骨に対し、より具体的な原因の候補を「中骨」として書き出します。(例:大骨「人」の中骨として「経験不足」「教育不足」「モチベーション」など)
- 小骨を設定する: 必要であれば、中骨に対してさらに詳細な原因を「小骨」として書き出します。(例:中骨「経験不足」の小骨として「 OJT期間が短い」「担当者の異動が多い」など)
- 原因を特定・分析する: 作成した特性要因図全体を眺め、データに基づいて最も影響が大きいと思われる根本原因を特定します。
ビジネスシーンでの活用事例
事例:顧客からの問い合わせ対応時間が長期化している
事業部の担当として、顧客からの問い合わせに対する平均応答時間が長くなり、満足度が低下しているという課題に取り組むケースを想定します。
- 問題: 問い合わせ対応時間の長期化
- 大骨: 「人」「プロセス」「システム」「情報」
- 中骨・小骨の洗い出し:
- 人: 経験不足、教育不足、担当者間のスキル差、人員不足、モチベーション低下
- (小骨)経験不足:新人の割合増加、OJTマニュアルの不備
- プロセス: 担当振り分けに時間がかかる、回答までの承認フローが複雑、情報共有が遅い、対応手順が不明確
- (小骨)承認フローが複雑:承認者が複数いる、エスカレーションルールがない
- システム: 問い合わせ管理ツールの不具合、FAQシステムが古い、情報検索に時間がかかる、連携システムがない
- (小骨)FAQシステムが古い:最新情報が更新されていない、検索性が低い
- 情報: 顧客情報の不足、過去の対応履歴にアクセスしにくい、製品情報の分散
- (小骨)製品情報の分散:最新の製品仕様書が共有されていない部署がある
- 人: 経験不足、教育不足、担当者間のスキル差、人員不足、モチベーション低下
- 原因特定: 作成した図を基に、データを確認した結果、「経験不足(新人の割合増加)」と「プロセス(承認フローの複雑化)」、「システム(FAQシステムの不備)」が主な要因として特定されました。
このように、特性要因図を使うことで、個別の事象として捉えられがちな「問い合わせ時間が長い」という問題に対し、複数の原因が複合的に影響している構造を明らかにすることができます。
利点・欠点・注意点
- 利点: 問題の根本原因を体系的に掘り下げて特定しやすい。関係者との共通認識を作りやすく、ブレインストーミングにも役立つ。
- 欠点: 大骨の設定が適切でないと効果が薄れる。洗い出した原因候補の妥当性をデータで検証する必要がある。
- 注意点: 推測だけで原因を書き出すのではなく、事実やデータに基づいた候補を挙げること。原因を特定したら、必ず解決策の検討に進むこと。
4. PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act Cycle)
概要と目的
PDCAサイクルは、継続的な業務改善や目標達成のためのマネジメントサイクルです。「計画(Plan)」「実行(Do)」「評価(Check)」「改善(Act)」の4つの段階を繰り返すことで、業務プロセスや目標達成度合いを着実に向上させていきます。
どのような問題解決に適しているか
- 業務改善: 特定の業務プロセスを継続的に効率化・改善したい場合。
- 目標達成: 設定した目標に対して、進捗を確認しながら改善を進めたい場合。
- 効果測定: 実施した施策の効果を検証し、次に繋げたい場合。
具体的な使い方・実践ステップ
PDCAの各ステップを順に進めます。
- 計画(Plan): 解決したい課題や達成したい目標を明確にし、それに対する具体的な施策、目標値、実施スケジュール、役割分担などを詳細に計画します。(例:Webサイトのコンバージョン率を3ヶ月で10%向上させるため、LPのデザインを変更する計画を立てる。目標:+10%、期間:3ヶ月、担当:〇〇さん、変更箇所:LPトップの画像とキャッチコピー)
- 実行(Do): 計画に基づいて施策を実行します。この時、計画通りに進んでいるか、課題はないかなどを記録します。(例:LPのデザイン変更を実施し、アクセス数やクリック数などのデータを収集する)
- 評価(Check): 実行した結果がどうだったかを、計画時に定めた目標値や指標と比較して評価します。良かった点、悪かった点、計画とのズレなどを分析します。(例:コンバージョン率が5%向上したが、目標の10%には届かなかった。変更した画像の効果はあったが、キャッチコピーはあまり読まれていないようだ、と分析する)
- 改善(Act): 評価結果に基づいて、次の行動を検討・実行します。計画とのズレの原因を取り除いたり、成功した要因をさらに活用したり、新たな改善策を立てたりします。この改善が次の「計画(Plan)」につながります。(例:キャッチコピーの改善案を検討する。効果のあった画像パターンを他のページにも適用することを検討する。)
ビジネスシーンでの活用事例
事例:チームの定例会議の効率化
チームリーダーとして、時間ばかりかかり成果に繋がりにくい定例会議の効率化に取り組むケースを想定します。
- 計画(Plan): 定例会議の時間を30分短縮し、議題数を絞る。アジェンダを事前に共有するルールを設定し、参加者の発言時間を意識的に調整する。次回会議から実施する。
- 実行(Do): 計画に基づき、次回の定例会議を運営する。会議時間、議論された内容、参加者の発言時間などを記録する。
- 評価(Check): 会議時間が目標通り短縮できたか(実際には15分短縮にとどまった)。議題は絞れたか(ほぼ計画通り)。アジェンダ事前共有は機能したか(半数のメンバーが確認していた)。発言時間の調整は効果があったか(特定のメンバーの発言時間が長かった)。
- 改善(Act): 時間短縮目標に届かなかった原因は何か(特定メンバーの発言時間、議論が脱線しやすい)。アジェンダ事前共有の浸透率を上げるにはどうするか(リマインダーを送る)。次回の計画では、特定メンバーへの事前声かけや、議論脱線時の軌道修正ルールを追加する。
このように、PDCAサイクルを回すことで、一度の施策で終わらせず、継続的にプロセスを改善していくことができます。
利点・欠点・注意点
- 利点: 継続的な改善活動に適している。目標設定と効果測定を組み合わせることで、施策の成果を明確に把握できる。
- 欠点: 計画、実行、評価、改善の各ステップをしっかり行わないと、単なるルーチンワークになりやすい。大きな方向転換には向かない場合がある。
- 注意点: 各ステップで「何のために」「何を」「どうするか」を具体的に定義すること。評価の際には、主観ではなく客観的なデータを用いること。Act(改善)を必ず次のPlanに繋げること。
5. なぜなぜ分析(Why-Why Analysis)
概要と目的
なぜなぜ分析は、発生した問題に対して「なぜそうなるのか?」を繰り返し問いかけ、その原因を深掘りしていくフレームワークです。表面的な原因ではなく、問題の根本原因(真因)にたどり着くことを目指します。トヨタ自動車の生産方式で有名になった手法です。
どのような問題解決に適しているか
- 根本原因の特定: 目に見える事象の裏にある、本当の原因を見つけたい場合。
- 再発防止: 同じ問題が繰り返し発生しないように、根源から対策を講じたい場合。
- 思考の深掘り: 表層的な思考から一歩進んで、深く物事を考えたい場合。
具体的な使い方・実践ステップ
「なぜ?」という問いを繰り返します。一般的には5回程度繰り返すと言われますが、回数にこだわる必要はありません。
- 解決したい問題(事象)を特定する: 原因を探りたい事象やトラブルを具体的に定義します。(例:顧客からの問い合わせに返信するのに、平均2日かかっている)
- 「なぜ?」を問う: 特定した問題に対して、「なぜその問題が発生したのか?」と問いかけ、その原因を考えます。(例:なぜ問い合わせに返信するのに平均2日かかるのか? → 担当者への振り分けに時間がかかっているから)
- さらに「なぜ?」を問う: 前の問いで明らかになった原因に対して、さらに「なぜそうなるのか?」と問いかけます。これを原因を掘り下げられる限界まで繰り返します。(例:
- なぜ担当者への振り分けに時間がかかるのか? → 問い合わせ内容の判断に時間がかかるから
- なぜ問い合わせ内容の判断に時間がかかるのか? → 新しいサービスに関する問い合わせが増えて、対応マニュアルが追いついていないから
- なぜ対応マニュアルが追いついていないのか? → 新しいサービスの情報共有体制が不十分だから
- なぜ情報共有体制が不十分なのか? → サービス開発部門とサポート部門間の連携ルールがないから)
- 根本原因を特定する: 「なぜ?」を繰り返すことで明らかになった最も深い原因が、根本原因である可能性が高いです。(例:サービス開発部門とサポート部門間の連携ルールの欠如)
- 対策を検討・実行する: 特定された根本原因に対して、再発防止のための対策を検討し、実行します。(例:サービス開発部門とサポート部門が定期的に情報共有する会議体を設けるルールを作る)
ビジネスシーンでの活用事例
事例:開発プロジェクトの納期遅延
事業開発担当として、担当する開発プロジェクトが繰り返し納期遅延を起こしているという課題に取り組むケースを想定します。
- 問題: プロジェクトの納期が遅延した。
- なぜ?: なぜ納期が遅延したのか? → 一部のタスクに想定以上の時間がかかったから
- なぜ?: なぜ想定以上の時間がかかったのか? → 仕様変更が直前に入ったから
- なぜ?: なぜ仕様変更が直前に入ったのか? → 顧客の要求定義が曖昧だったから
- なぜ?: なぜ顧客の要求定義が曖昧だったのか? → 要件定義フェーズでの顧客との擦り合わせが不十分だったから
- なぜ?: なぜ擦り合わせが不十分だったのか? → 営業担当と開発担当の間で、顧客とのコミュニケーション方法に関する共通認識がなかったから
このように深掘りすることで、当初は「タスクの見積もりが甘かった」といった表面的な原因に留まりがちだったものが、「部門間のコミュニケーションルール」というより根本的な課題にたどり着くことができます。
利点・欠点・注意点
- 利点: 問題の真因を探るのに非常に効果的。再発防止策の立案に繋がりやすい。シンプルで取り組みやすい。
- 欠点: 表面的な原因で分析を終えてしまう可能性がある。原因が複合的すぎると整理が難しい場合がある。
- 注意点: 責任追及が目的にならないようにすること。事象に対して客観的に「なぜ?」を問い続けること。最低5回という回数に囚われすぎず、真因にたどり着くまで続けること。
問題の種類や状況に応じたフレームワークの使い分け
ここまで5つのフレームワークを見てきました。それぞれに特徴があり、得意とする問題解決の領域が異なります。どのような状況でどのフレームワークを使えば良いか、使い分けのポイントをまとめます。
| フレームワーク | 得意な問題の種類 | 使い分けのヒント | | :---------------------- | :----------------------------------- | :------------------------------------------------------------------------------- | | ロジックツリー | 問題の分解、原因・解決策の網羅的検討 | 複雑な問題を整理したい時。原因や解決策の候補を「漏れなく」洗い出したい時。 | | SWOT分析 | 戦略立案、外部・内部環境分析 | 新規事業や新しいプロジェクトの方向性を決める時。競合や市場環境を含めて考えたい時。 | | 特性要因図 | 根本原因の究明(特に製造・プロセス) | 特定の事象が発生した「原因」を深掘りしたい時。要素間の関係性を整理したい時。 | | PDCAサイクル | 継続的な業務改善、目標達成 | 一度きりではなく、繰り返し改善活動を行いたい時。具体的な目標設定と進捗管理が必要な時。 | | なぜなぜ分析 | 根本原因の究明(特にトラブル・事象) | 問題が発生した「理由」を深掘りしたい時。シンプルな事象の真因を探りたい時。 |
ケーススタディ:新規サービスの売上低迷
あなたが担当する新規サービスの売上が伸び悩んでいる、という状況を考えてみましょう。
- もし、原因が全く分からない場合:
- まずロジックツリーで「売上」を構成する要素(アクセス数、コンバージョン率、顧客単価など)に分解し、どこに問題があるかを特定する。
- 特定した問題(例:コンバージョン率が低い)に対して、特性要因図やなぜなぜ分析で、なぜコンバージョン率が低いのかの根本原因(例:LPが分かりにくい、競合より価格が高い、ターゲットとずれている)を深掘りする。
- もし、競合サービスとの比較や市場環境の変化が関係していそうな場合:
- SWOT分析で自社サービスの強み・弱み、市場の機会・脅威を整理し、競合との差別化ポイントや、取るべき戦略の方向性を検討する。
- もし、サービスの利用プロセス自体に課題がありそうな場合:
- ユーザーがサービスを利用する一連のプロセスを洗い出し、その中で「なぜユーザーが離脱するのか?」「なぜ次のステップに進まないのか?」をなぜなぜ分析で深掘りする。
- 特定したプロセス上の課題に対して、具体的な改善策を立て、PDCAサイクルを回しながら継続的に改善に取り組む。
このように、問題の種類や状況に応じて、最適なフレームワークを選択したり、複数のフレームワークを組み合わせて使用したりすることが効果的です。例えば、SWOT分析で戦略の方向性を見出した後、その戦略を実行するための具体的な課題をロジックツリーで分解し、発見された問題の原因を特性要因図やなぜなぜ分析で特定し、対策をPDCAサイクルで回しながら実行・改善していく、といった流れも考えられます。
問題解決フレームワークを効果的に活用するための心構えと実践のコツ
フレームワークはあくまで「道具」です。道具を効果的に使うためには、いくつかの心構えと実践のコツがあります。
- 完璧を目指さない、まずは試してみる: 最初から完璧な図や分析結果を目指す必要はありません。まずは簡単なものからでも良いので、実際に手を動かして使ってみることが大切です。使っていくうちに、自分なりの使い方のコツや、状況に応じた応用方法が見えてきます。
- 目的を明確にする: 「何のためにこのフレームワークを使うのか?」「このフレームワークを使って何を明らかにしたいのか?」という目的を常に意識しましょう。目的が明確であれば、適切なフレームワークを選びやすくなりますし、分析結果を次に繋げやすくなります。
- 事実やデータに基づいて考える: 勘や主観だけでなく、客観的なデータや事実を基に分析を進めることが重要です。特に特性要因図やなぜなぜ分析では、推測だけで原因を決めつけないように注意が必要です。
- 一人で抱え込まない、チームで活用する: フレームワークは、関係者との共通認識を作る上でも非常に有効です。特にロジックツリーや特性要因図は、チームで議論しながら作成することで、多様な視点を取り入れ、より質の高い分析が可能になります。
- 他のフレームワークと組み合わせる: 一つのフレームワークですべての問題が解決するわけではありません。必要に応じて、複数のフレームワークの良いところを組み合わせて活用することを恐れないでください。
まとめ:今日から始める問題解決フレームワーク実践の第一歩
この記事では、ビジネスシーンで役立つ代表的な問題解決フレームワークとして、ロジックツリー、SWOT分析、特性要因図、PDCAサイクル、なぜなぜ分析の5つをご紹介しました。
それぞれのフレームワークは、問題の構造化、原因特定、戦略立案、継続改善など、異なる側面に強みを持っています。目の前の課題がどのような性質を持っているのかを見極め、本記事でご紹介した使い分けのヒントを参考に、適切なフレームワークを選んでみてください。
最初からすべてを使いこなそうとする必要はありません。まずはあなたが今直面している一つの課題に対し、最も使えそうだと思ったフレームワークを一つ試してみてください。例えば、業務上の小さなトラブルの原因究明に「なぜなぜ分析」を使ってみる、チーム内の非効率な会議に「PDCAサイクル」を適用してみるなど、身近なところから始めるのがおすすめです。
問題解決のスキルは、経験を積むことで磨かれていきます。ぜひ今日から一つでも良いので、問題解決フレームワークをあなたの業務に取り入れ、その効果を実感してください。一歩踏み出すことで、きっと新しい視界が開けるはずです。