考えを整理し、成果を出す!問題解決フレームワーク5選【実践ガイド】
はじめに:なぜ、問題解決に「フレームワーク」が必要なのでしょうか
新しい業務やプロジェクトに取り組む中で、「何から手をつければ良いか分からない」「課題の全体像が見えない」「考えがまとまらず、具体的な打ち手が見出せない」といった壁に直面することはありませんか。一生懸命考えているのに、堂々巡りになったり、表面的な解決策しか思いつかなかったりすることは、決して珍しいことではありません。
こうした状況を乗り越え、効果的に課題を解決し、成果に繋げるためには、物事を論理的に整理し、分析するための「型」を知っていることが非常に役立ちます。この「型」こそが、「問題解決フレームワーク」です。
フレームワークは、あなたの思考を整理し、問題の本質を見抜く手助けをしてくれます。闇雲に考えるのではなく、一定の手順や視点に沿って思考を進めることで、複雑な問題も分解し、解決への道筋を明確にすることができるのです。これは、特に経験が浅い段階では、課題解決の精度とスピードを格段に向上させる力強い武器となります。
この記事では、ビジネスシーンで頻繁に使われ、すぐにあなたの業務に活かせる代表的な問題解決フレームワークを5つご紹介します。それぞれのフレームワークの基本的な使い方、具体的な手順、そして若手事業開発担当者の方などがご自身の業務に応用しやすい実践事例を交えて解説します。
これらのフレームワークを学ぶことで、あなたの思考はより整理され、課題の本質を見抜き、成果に繋がる具体的な打ち手を見出す力が養われるはずです。ぜひ、この記事を読み、明日からの業務で実践してみてください。
1. ロジックツリー:問題を分解し、全体像と構造を把握する
概要と目的
ロジックツリーは、問題やテーマを要素に分解し、樹状に展開していく思考ツールです。複雑な問題を体系的に整理し、全体像を把握したり、原因や解決策を網羅的に洗い出したりするのに役立ちます。
どのような種類の問題解決に適しているか
- 問題の原因を深掘りしたい場合(原因追求ツリー)
- 解決策の選択肢を幅広く検討したい場合(問題解決ツリー、施策ツリー)
- 目標を達成するための具体的な行動計画を立てたい場合(What-To-Doツリー)
- 複雑な論点を整理し、抜け漏れなく検討したい場合
具体的な使い方、実践ステップ
ロジックツリーを作成する基本的なステップは以下の通りです。
- 出発点の設定: 解決したい問題、探求したい原因、達成したい目標など、ツリーの最上位に来るテーマを設定します。例えば、「新商品の売上が目標を下回っている」などです。
- 最初の分解: 設定したテーマを、いくつかの主要な要素に分解します。このとき、「MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive:漏れなく、ダブりなく)」を意識すると、より網羅的な分解ができます。例えば、「売上が低い」という問題を「顧客数」「購入単価」「購入頻度」に分解するなどです。
- 階層的な分解: 分解した各要素を、さらに下位の要素へと分解していきます。これを問題の深さや検討の必要に応じて繰り返します。例えば、「顧客数」を「新規顧客数」「リピート顧客数」に分解し、「新規顧客数」をさらに「ウェブサイトからの流入」「店舗への来店」などに分解するなどです。
- 終着点の設定: どこまで分解するかを決めます。これ以上分解しても意味がない、あるいは、これ以上分解すると具体的なアクションに結びつかない、といったレベルで止めます。
- 可視化と検討: 作成したツリーを視覚的に確認し、問題の構造や要素間の関係性を把握します。漏れやダブりがないか、分解は適切かなどを検討します。
ビジネスシーンでの活用事例
新商品事業の責任者として、「目標売上を達成できない」という問題に直面したケース。
- 出発点: 「新商品の売上目標未達成」
- 最初の分解: 「売上 = 顧客数 × 購入単価 × 購入頻度」と分解し、「顧客数が足りない」「購入単価が低い」「購入頻度が少ない」の3つに分けて検討する。
- 階層的な分解(例:顧客数が足りない):
- 顧客数が足りない
- 新規顧客の獲得不足
- 広告の効果が低い
- 広告内容が魅力的でない
- ターゲット層に届いていない媒体を選んでいる
- ウェブサイトへの流入が少ない
- 検索エンジンの表示順位が低い
- SNSでの露出が少ない
- 広告の効果が低い
- リピート顧客の減少
- 商品満足度が低い
- アフターフォローが不十分
- 新規顧客の獲得不足
- 顧客数が足りない
このようにツリー形式で分解することで、売上未達成という一つの問題が、広告、ウェブサイト、顧客満足度など、様々な要素の組み合わせによって引き起こされている可能性を視覚的に捉え、次にどの要素に焦点を当てて分析や改善策の検討を進めるべきかが見えやすくなります。
利点、欠点、適用上の注意点
- 利点: 複雑な問題の構造を明確にし、網羅的な思考を促します。複数人で共有しやすく、議論の土台になります。
- 欠点: MECEに分解するにはある程度の慣れが必要です。分解しすぎると収拾がつかなくなることがあります。あくまで構造化ツールであり、具体的な解決策そのものを示すわけではありません。
- 注意点: 分解の粒度を適切に設定することが重要です。一人で抱え込まず、関係者と協力して作成すると、多様な視点を取り入れられます。
2. なぜなぜ分析:問題の根本原因を深く探る
概要と目的
なぜなぜ分析は、「なぜ」を繰り返し問うことで、目の前の問題の背後にある真の根本原因を探り当てるための手法です。表面的な原因にとらわれず、問題の発生メカニズムを深掘りすることを目的とします。
どのような種類の問題解決に適しているか
- 発生してしまったトラブルや不具合の原因究明
- 期待通りの結果が出なかった理由の深掘り
- プロセスの非効率性の原因特定
- 再発防止策の検討
具体的な使い方、実践ステップ
基本的な「なぜなぜ分析」のステップはシンプルです。
- 問題提起: 解決したい、あるいは原因を究明したい具体的な問題事象を設定します。「〇〇という問題が発生した」のように明確に記述します。
- 最初の「なぜ?」: 設定した問題に対して、「なぜその問題が発生したのか?」と問いかけ、その直接的な原因を特定します。
- 次の「なぜ?」: 特定された原因に対して、さらに「なぜそれが起きたのか?」と問いかけ、その原因の背後にある原因を探ります。
- 「なぜ?」の繰り返し: この「なぜ?」という問いかけを、一般的には5回程度繰り返すと言われています(「5回のなぜ」)。ただし、回数はあくまで目安であり、真の根本原因にたどり着いたと思えるまで問い続けることが重要です。
- 根本原因の特定と対策検討: 繰り返し問いかけることで、問題の発生メカニズムが明らかになり、表面的な原因ではない、真の根本原因が見えてきます。その根本原因に対して、効果的な対策を検討・実行します。
ビジネスシーンでの活用事例
新規サービスの利用者数が目標を大幅に下回っているという問題に直面したケース。
- 問題: 新規サービスの利用者数が目標を下回っている。
- なぜ?1: なぜ利用者数が目標を下回っているのか? → サービス登録完了率が低いから。
- なぜ?2: なぜサービス登録完了率が低いのか? → 登録フォームからの離脱が多いから。
- なぜ?3: なぜ登録フォームからの離脱が多いのか? → 入力項目が多すぎる、あるいは入力方法が分かりにくいから。
- なぜ?4: なぜ入力項目が多すぎるのか? → 開発時に、マーケティング部門と連携せず、社内データ収集を優先して項目を設定したから。
- なぜ?5: なぜマーケティング部門と連携しなかったのか? → 開発プロセスの早い段階で、部門間の情報共有のルールが明確に定められていなかったから。
この例では、表面的な原因(利用者数不足)から出発し、「部門間の情報共有ルールの不在」という組織的な根本原因にたどり着きました。対策としては、登録フォームの改善だけでなく、部門横断での情報共有プロセスの見直しが必要であることが分かります。
利点、欠点、適用上の注意点
- 利点: 問題の根本原因を深く掘り下げ、再発防止に繋がりやすい対策を導き出せます。シンプルで取り組みやすい手法です。
- 欠点: 問いかけが浅かったり、途中で思考が止まったりすると、表面的な原因で終わってしまうことがあります。原因だと断定する前に、それが本当に原因であるかどうかの検証が必要です。
- 注意点: 個人で行うよりも、問題に関わる複数人で行う方が、多様な視点から原因を探れます。「なぜ」を問い詰めるのではなく、「なぜそうなるのだろう?」という客観的な視点で進めることが重要です。
3. SWOT分析:内部と外部の状況を整理する
概要と目的
SWOT分析は、事業やプロジェクトを取り巻く状況を、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つの要素に分けて整理・分析するフレームワークです。内部環境(強み、弱み)と外部環境(機会、脅威)の両面から現状を理解し、戦略立案の基礎とすることを目的とします。
どのような種類の問題解決に適しているか
- 新しい事業やサービスの企画立案
- 既存事業の課題発見と改善策検討
- 競合との差別化戦略の検討
- 市場変化への対応策検討
具体的な使い方、実践ステップ
SWOT分析は、以下のステップで進めます。
- 分析対象の設定: 分析したい対象(自社全体、特定の事業部、新サービス、特定の課題など)を明確に定めます。
- 内部環境の分析(Strength, Weakness): 分析対象の内部にある要素について、「強み」(Internal Positive)と「弱み」(Internal Negative)を洗い出します。これは自社の資源、技術、ブランド力、組織文化、人材、ノウ細など、自身でコントロール可能な要素に関することです。
- 例:自社の強み - 高い技術力、顧客からの信頼、優秀な人材
- 例:自社の弱み - 限られた資金、ブランド認知度の低さ、非効率な社内プロセス
- 外部環境の分析(Opportunity, Threat): 分析対象を取り巻く外部環境にある要素について、「機会」(External Positive)と「脅威」(External Negative)を洗い出します。これは市場トレンド、競合の動向、法規制、経済状況、技術革新など、自身ではコントロールしにくい要素に関することです。
- 例:市場の機会 - 新規市場の出現、競合の撤退、技術革新による新たな可能性
- 例:市場の脅威 - 競合の新規参入、法規制強化、消費者ニーズの変化
- クロス分析(戦略策定): 洗い出した4つの要素を組み合わせて分析し、具体的な戦略や打ち手を検討します。
- SO戦略(強み×機会): 強みを活かして機会を捉える攻めの戦略。
- ST戦略(強み×脅威): 強みを活かして脅威を回避・克服する戦略。
- WO戦略(弱み×機会): 機会を捉えるために弱みを克服する戦略。
- WT戦略(弱み×脅威): 弱みを抱えつつ脅威を回避するための防御・最悪回避戦略。
ビジネスシーンでの活用事例
若手事業開発担当者が、新しいBtoB SaaSサービスの企画段階でSWOT分析を行ったケース。
| 環境 | ポジティブ(+) | ネガティブ(-) | | :--- | :---------------------- | :--------------------- | | 内部 | S: 強み (Strength) | W: 弱み (Weakness) | | | ・特定の業界における豊富な顧客基盤 | ・SaaS開発の経験が少ない | | | ・データ分析技術に長けたエンジニアチーム | ・マーケティング専門人材が不足 | | | ・既存事業との連携によるクロスセル機会 | ・競合と比べ開発スピードが遅い可能性 | | 外部 | O: 機会 (Opportunity) | T: 脅威 (Threat) | | | ・対象業界でのDX推進ニーズの高まり | ・有力な競合が既に複数存在する | | | ・中小企業向けのSaaS市場が拡大中 | ・法規制によるセキュリティ要件の強化 | | | ・クラウド技術のコスト低下 | ・顧客の導入リテラシーにばらつき |
- SO戦略(強み×機会)の例: 豊富な顧客基盤(S)と業界のDXニーズ高まり(O)を活かし、既存顧客向けのDX推進支援ツールとしてサービスを提案する。
- WO戦略(弱み×機会)の例: SaaS開発経験の少なさ(W)を、市場拡大(O)を捉えるために、外部のSaaS開発パートナーと連携して補う。
- ST戦略(強み×脅威)の例: 高いデータ分析技術(S)を活かし、既存競合(T)が提供していない高度な分析機能で差別化を図る。
- WT戦略(弱み×脅威)の例: マーケティング人材不足(W)と競合の多さ(T)を踏まえ、最初は既存顧客へのアップセルに集中し、限定的なマーケティングから始める。
このように、4つの要素を組み合わせることで、自社の状況に応じた具体的な戦略の方向性が見えてきます。
利点、欠点、適用上の注意点
- 利点: 内部・外部の両面から状況を網羅的に整理できます。個々の要素だけでなく、それらの組み合わせによる戦略的な視点が得られます。
- 欠点: 分析する要素の抽出が主観的になりがちです。洗い出しただけで終わってしまい、次のアクションに繋がらないこともあります。
- 注意点: 事実に基づいた客観的な情報収集が重要です。分析結果から具体的な戦略を導き出すクロス分析に時間をかけましょう。定期的に分析し直すことで、状況の変化に対応できます。
4. 特性要因図(フィッシュボーン図):問題の原因候補を網羅的に洗い出す
概要と目的
特性要因図(別名:フィッシュボーン図、なぜなぜ図)は、特定の問題結果(特性)に対して影響を与えていると考えられる要因を、体系的に整理し、視覚的に把握するための図です。魚の骨のような形をしていることからフィッシュボーン図と呼ばれます。問題の考えられる原因候補を網羅的に洗い出すことを目的とします。
どのような種類の問題解決に適しているか
- 発生した品質問題や不具合の原因究明
- 業務プロセスの非効率性の原因特定
- 目標達成を妨げている要因の洗い出し
- 複数人で原因についてブレインストーミングを行う場面
具体的な使い方、実践ステップ
特性要因図の作成ステップは以下の通りです。
- 問題(特性)の設定: 図の右端に、分析対象とする問題結果(特性)を明確に記述します。これが魚の頭の部分になります。例:「ウェブサイトからの問い合わせ件数が減少した」などです。
- 大骨の作成: 問題に影響を与えると思われる主要な要因カテゴリーをいくつか設定し、問題結果から線を引いて繋ぎます。これが魚の「大骨」になります。一般的なカテゴリーとしては、製造業の「4M」(Man:人、Machine:機械、Material:材料、Method:方法)や、サービス業や事務部門で使われる「4P」(People:人、Process:プロセス、Policy:方針、Plant/Physical Evidence:設備/物的証拠)などがありますが、目的に応じて自由に設定して構いません。例えば、「問い合わせ件数減少」であれば、「人(ウェブサイト利用者)」「プロセス(ウェブサイトの操作・導線)」「情報(コンテンツ内容)」「技術(ウェブサイトのシステム)」などが考えられます。
- 中骨・小骨の作成: 各大骨のカテゴリーに対し、「なぜそのカテゴリーが問題に影響しているのか?」と考え、さらに具体的な原因候補を洗い出し、線で繋いでいきます(中骨、小骨)。洗い出した原因候補に対して、さらに深掘りが必要であれば、「なぜ?」を繰り返して小骨を増やしていきます。ブレインストーミング形式で自由な発想を促すと効果的です。
- 例:「プロセス」という大骨の下に、「フォーム入力が手間」「目的の情報が見つけにくい」「問い合わせボタンが分かりづらい」などの中骨・小骨を追加する。
- 重要原因の絞り込み: 洗い出された多数の原因候補の中から、特に影響が大きいと考えられるものを絞り込みます。必要に応じて、データ収集や追加調査を行い、仮説の検証を行います。
- 対策の検討: 絞り込まれた重要な原因に対して、具体的な対策を検討・実行します。
ビジネスシーンでの活用事例
自社ウェブサイトからの問い合わせ件数が減少した原因を探るケース。
- 問題(特性): ウェブサイトからの問い合わせ件数の減少
- 大骨(カテゴリー):
- 人(サイト訪問者)
- プロセス(サイト操作、導線)
- 情報(コンテンツ)
- 技術(システム)
- 中骨・小骨(原因候補)の例:
- 人: 目的のページにたどり着けない、スマートフォンでの操作に不慣れ、入力が面倒だと感じる
- プロセス: 問い合わせフォームへの導線が分かりにくい、フォームの項目数が多い、ページの読み込みが遅い
- 情報: 必要な情報がサイトに掲載されていない、情報が古く信頼できない、問い合わせるほどではない簡単な質問の回答が見つからない(FAQ不足)
- 技術: サーバーダウンが頻繁に起きる、特定のブラウザで表示崩れが起きる、スマートフォン表示が最適化されていない
このように原因候補を洗い出すことで、「フォームの項目数を減らす」「FAQページを充実させる」「スマホ表示を改善する」など、多角的な視点から対策を検討する糸口が得られます。
利点、欠点、適用上の注意点
- 利点: 問題の原因候補を体系的、網羅的に洗い出すのに役立ちます。複数人でのブレインストーミングに適しており、多様な視点を取り入れやすいです。視覚的に分かりやすいため、原因の共有がしやすいです。
- 欠点: あくまで原因候補を洗い出すツールであり、その原因が本当に問題を引き起こしているのかの検証は別途必要です。原因候補の洗い出しが浅いと、根本原因にたどり着けないことがあります。
- 注意点: 最初から完璧を目指さず、まずは思いつく原因候補を自由に書き出してみましょう。原因候補のカテゴリー設定が分析の質を左右するため、適切なカテゴリーを選定することが重要です。
5. PDCAサイクル:継続的な改善活動を推進する
概要と目的
PDCAサイクルは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の4つの段階を繰り返すことで、業務やプロジェクトを継続的に改善し、目標達成を目指す管理手法です。計画立案だけでなく、実行後の検証と改善を重視することで、継続的な質の向上と成果の創出を目的とします。
どのような種類の問題解決に適しているか
- 業務プロセスの改善活動
- 目標管理と達成度向上
- 施策の効果検証と改善
- プロジェクト管理における進捗管理と軌道修正
具体的な使い方、実践ステップ
PDCAサイクルは、以下の4つのステップを順番に、そして繰り返し実行します。
- Plan(計画): 解決したい問題に対する目標を設定し、その目標を達成するための具体的な計画を立てます。「何を」「いつまでに」「どのように」行うかを明確に定めます。計画には、目標値、実施内容、スケジュール、担当者、必要なリソースなどが含まれます。
- 例:目標 - サービス登録完了率を現状の10%から15%に向上させる。計画 - 登録フォームの項目数を半分に削減し、A/Bテストを実施する。スケジュール - 〇月末までに改修、来月末までテスト。
- Do(実行): 計画に基づいて、具体的な行動を実行します。この際、計画通りに進んでいるか、問題が発生していないかなどを記録しておくことが重要です。
- 例:登録フォームの項目削減、改修したフォームのシステム実装、A/Bテストツールの設定と実施。
- Check(評価): 実行した結果を、計画時に設定した目標や基準と照らし合わせて評価・分析します。「なぜうまくいったのか」「なぜうまくいかなかったのか」を具体的に検証します。
- 例:A/Bテストの結果を分析し、改修したフォームの完了率が実際に向上したかを確認する。ユーザーの離脱ポイントや入力エラー率などをデータで詳細に確認する。
- Action(改善): 評価結果に基づいて、次の行動を決定します。うまくいったことは標準化・仕組み化し、うまくいかなかったことは原因を分析し、改善策を検討します。そして、この改善策を次のPlanに繋げ、再びサイクルを回します。
- 例:改修したフォームの効果が確認できたため、全てのユーザーに適用する。さらに、評価で明らかになった別の課題(例:特定の入力項目でのエラーが多い)に対して、次の改善計画を立てる。
ビジネスシーンでの活用事例
自社サービスのウェブサイトUI/UXを改善し、コンバージョン率を高めたいケース。
- Plan: 目標:コンバージョン率を〇%向上させる。計画:ユーザー行動分析ツールで課題箇所を特定し、離脱率の高いページのボタンの色・配置を変更する。スケジュール:2週間で変更、2週間で効果測定。
- Do: ユーザー行動分析ツールで得られたデータに基づき、特定のページのボタンの色と配置を変更する。
- Check: 変更後の2週間のコンバージョン率を計測し、変更前と比較する。ユーザー行動分析ツールで、変更したページの離脱率やクリック率の変化を詳細に確認する。
- Action: コンバージョン率が向上した場合は、その変更を正式に採用し、他のページへの応用を検討する。向上しなかった、あるいは悪化した場合は、なぜそうなったのか(なぜなぜ分析などを活用)をさらに分析し、別の改善策(例:テキストの変更、入力項目の削減など)を次のPlanとして実施する。
このサイクルを繰り返すことで、ウェブサイトのUI/UXは継続的に改善され、コンバージョン率のさらなる向上を目指すことができます。
利点、欠点、適用上の注意点
- 利点: 継続的な改善活動を組織に定着させやすいフレームワークです。目標達成に向けた計画、実行、評価、改善のプロセスが明確になります。
- 欠点: サイクルを回すこと自体が目的化し、形骸化することがあります。評価や改善の段階がおろそかになると、効果が得られません。短期的な成果が出にくい場合があります。
- 注意点: 各ステップを丁寧に行うことが重要です。特にCheck(評価)の段階で、客観的なデータに基づいて冷静に分析することが成功の鍵となります。一度で完璧な計画を立てようとせず、実行と評価を通じて改善していく姿勢が大切です。
5つのフレームワークの使い分けと組み合わせのヒント
ここまで5つの代表的な問題解決フレームワークをご紹介しました。それぞれに特徴があり、適した状況や問題の種類が異なります。
- 問題の全体像把握・構造化: ロジックツリー
- 問題の原因特定・深掘り: なぜなぜ分析、特性要因図
- 現状の状況分析(内部・外部): SWOT分析
- 計画実行後の継続的な改善: PDCAサイクル
これらのフレームワークは、単独で使うだけでなく、組み合わせて使うことで、より効果的な問題解決が可能になります。
例えば:
- 複雑な問題の構造を理解し、原因を探る:
- まずロジックツリーで問題を構成要素に分解し、全体像と気になる部分を特定します。
- 次に、特定した要素(例:「〇〇の利用率が低い」)について、特性要因図やなぜなぜ分析を使って考えられる原因候補を網羅的に洗い出したり、根本原因を深掘りしたりします。
- 原因が特定できたら、それに対する対策を検討・実行し、PDCAサイクルで効果を確認・改善していきます。
- 新しい企画立案や戦略検討:
- まずSWOT分析で自社と市場の状況を整理・理解します。
- SWOT分析で見つかった機会や脅威、自社の強み・弱みを踏まえ、どのような問題(課題)に取り組むべきかを明確にします。
- 特定した課題について、ロジックツリーで打ち手の選択肢を洗い出したり、目標達成に必要な要素を分解したりします。
- 実行段階ではPDCAサイクルを活用し、計画通りに進んでいるか、効果は出ているかを管理・改善します。
問題解決は、問題の発見・定義、原因究明、解決策の立案、実行、評価・改善といった一連のプロセスで成り立ちます。ご紹介したフレームワークは、このプロセスの様々な段階であなたの思考や分析を助けてくれるツールです。一つのフレームワークに固執せず、問題の種類や直面している状況に合わせて、最適なツールを選び、必要であれば組み合わせて活用することが重要です。
フレームワークを効果的に活用するための心構え
問題解決フレームワークは、あくまで「ツール」です。ツールは使う人次第でその効果が変わります。フレームワークを最大限に活かすために、以下の心構えを大切にしてください。
- 「思考停止のツール」にしない: フレームワークの穴埋めをすること自体が目的になってはいけません。フレームワークは思考を深めるためのガイドであり、問い続ける姿勢が何よりも重要です。
- 完璧を目指さない: 最初から正確なロジックツリーや完璧なSWOT分析を行おうとする必要はありません。まずは大まかで構わないので、試行錯誤しながら使ってみることが第一歩です。
- 事実に基づいて考える: 思い込みや感覚だけでなく、可能な限りデータや客観的な事実に基づいて分析を進めましょう。
- 一人で抱え込まない: チームや関係者と一緒にフレームワークを使うことで、多様な視点を取り入れ、より質の高い分析やアイデアが得られます。
- 実践と改善を繰り返す: フレームワークを使って出した結論や対策を実行し、その結果を評価し、必要であればフレームワークの使い方も含めて改善していく、というサイクルを回すことで、あなたの問題解決スキルは磨かれていきます。
おわりに:今日から、あなたの問題解決力を高めましょう
この記事では、業務で役立つ代表的な問題解決フレームワークとして、ロジックツリー、なぜなぜ分析、SWOT分析、特性要因図、PDCAサイクルの5つをご紹介しました。
これらのフレームワークは、複雑な問題を分解し、原因を探り、状況を理解し、継続的に改善を進めるための強力な助けとなります。特別な知識や経験がなくても、その基本的な使い方を知っていれば、すぐにあなたの業務に活かすことができます。
もちろん、フレームワークが全ての答えを与えてくれるわけではありません。大切なのは、フレームワークを使いながら、あなた自身の頭で深く考え、関係者と対話し、最適な解決策を見出していくプロセスです。
今日から、まずはあなたの目の前にある小さな課題に対して、この記事で紹介したフレームワークのどれか一つでも試してみてください。例えば、「なぜこの業務はこんなに時間がかかるのだろう?」と疑問に思ったら、なぜなぜ分析を試してみる。新しい企画のアイデア出しに行き詰まったら、SWOT分析で状況を整理してみる。
一歩踏み出し、実践を繰り返すことこそが、あなたの問題解決スキルを確実に向上させる道です。ぜひ、問題解決フレームワークをあなたのビジネスにおける強力な武器として、存分に活用してください。あなたの課題解決への挑戦を応援しています。