課題の「なぜ?」を見つける!原因特定に役立つフレームワーク5選【初心者向け実践ガイド】
業務課題の原因を特定する重要性:なぜフレームワークが必要なのか
新しい業務やプロジェクトに取り組む中で、「なぜかうまくいかない」「何が問題なのかは分かるけれど、その根本的な原因が分からない」と感じることはありませんか。一生懸命に取り組んでいるのに、どうすれば状況が改善されるのか、具体的な次のアクションが見えない時、多くの若手ビジネスパーソンが課題に直面します。
問題解決は、まず「何が問題なのか(問題の定義)」を明確にすることから始まります。しかし、それだけでは十分ではありません。問題がなぜ起きているのか、その「原因」を正確に特定することが、効果的な解決策を見つけ出すための最も重要なステップの一つです。原因が曖昧なままでは、表面的な対策しか打てず、同じ問題が再発したり、より深刻化したりするリスクがあります。
ここで役立つのが、「問題解決フレームワーク」です。フレームワークとは、問題の状況や情報を整理し、思考を深めるための「型」や「枠組み」のことです。原因特定という複雑なプロセスを、体系的なステップに分解し、漏れなく、かつ論理的に思考を進める手助けをしてくれます。
本記事では、特に業務課題の原因特定に役立つ、すぐに実践できる代表的なフレームワークを5つご紹介します。それぞれのフレームワークの基本的な使い方、具体的なステップ、そして実際のビジネスシーンでの活用事例を通じて、あなたが直面する「なぜ?」を解き明かし、課題解決の第一歩を踏み出すためのお手伝いをいたします。
原因特定に役立つフレームワーク5選
問題の原因を探る際に特に有効な、代表的なフレームワークを5つご紹介します。これらのフレームワークは単独で使うだけでなく、組み合わせて活用することで、より多角的に原因を深掘りすることが可能です。
1. なぜなぜ分析(Why-Why Analysis)
- 概要と目的: 発生した問題や事象に対し、「なぜ?」を繰り返し問いかけることで、その根本原因を追求する手法です。トヨタ生産方式で採用されたことで広く知られています。一つの事象から出発し、原因と結果の関係を段階的に掘り下げていきます。
- どのような問題に適しているか: 比較的明確な一つの事象や問題点に対する、直接的な原因を深掘りしたい場合に適しています。製造業の品質問題、サービス業の顧客クレーム、システム障害など、具体的な問題が発生した場合に有効です。
- 具体的な使い方・実践ステップ:
- ステップ1:問題事象を明確にする。 「〇〇が発生した」「△△が起きた」など、具体的な問題や事象を明確に記述します。
- ステップ2:「なぜ?」と問いかける。 ステップ1で定義した問題事象に対して、「なぜそれが起きたのか?」と問いかけ、その原因を考えます。
- ステップ3:原因に対してさらに「なぜ?」と問いかける。 ステップ2で見つかった原因に対し、さらに「なぜそれが起きたのか?」と問いかけ、次の階層の原因を考えます。
- ステップ4:これを繰り返す(目安として5回程度)。 原因を掘り下げる作業を繰り返します。一般的には5回繰り返すと根本原因にたどり着きやすいと言われますが、回数にこだわる必要はありません。重要なのは、真の根本原因にたどり着くまで深く考えることです。
- ステップ5:根本原因と対策を検討する。 繰り返しによってたどり着いた最も深い階層の原因(根本原因)に対して、効果的な解決策を検討します。
- ビジネスシーンでの活用事例:
- 問題事象: 「新サービスの顧客満足度が目標を下回っている」
- なぜ?1: なぜ顧客満足度が低いのか? → 「サービス利用方法が分かりにくいという意見が多い」
- なぜ?2: なぜ利用方法が分かりにくいのか? → 「チュートリアル動画の視聴率が低い」「ヘルプページが複雑で探しにくい」
- なぜ?3: なぜ視聴率が低い、ヘルプページが複雑なのか? → 「チュートリアル動画が長すぎる」「ヘルプページの構成が情報過多になっている」
- なぜ?4: なぜ動画が長い、ページが複雑なのか? → 「開発担当者が機能説明に終始し、利用者の視点が不足していた」
- なぜ?5: なぜ利用者の視点が不足していたのか? → 「開発プロセスに利用者テストの工程が組み込まれていなかった」
- 根本原因候補: 開発プロセスにおける利用者テストの不足
- 対策候補: 開発プロセスに利用者テストを導入する、チュートリアル動画を分割・短縮する、ヘルプページをQ&A形式に再構成するなど。
- 利点・欠点・注意点:
- 利点: シンプルで分かりやすく、誰でもすぐに始められます。原因と結果の因果関係を深く掘り下げるのに有効です。
- 欠点: 一つの原因経路しか追えないため、複数の要因が複雑に絡み合う問題の全体像を捉えるのには限界があります。「なぜ?」の問いかけが不適切だと、間違った方向に深掘りしてしまうリスクもあります。
- 注意点: 原因追及が単なる非難にならないよう、客観的な事実に基づいて進めることが重要です。「5回繰り返す」は目安であり、状況に応じて回数を調整してください。主観や推測で終わらず、根拠のある事実に基づいた原因を追求する姿勢が大切です。
2. 特性要因図(フィッシュボーン図、Ishikawa Diagram)
- 概要と目的: 問題となる「結果」(特性)に対し、それに影響を与えていると考えられる様々な「要因」を魚の骨のような形状で整理し、視覚化する手法です。考えられる原因候補を網羅的に洗い出し、相互関係を整理するのに役立ちます。
- どのような問題に適しているか: 複数の要因が複雑に絡み合って一つの問題が発生している場合に適しています。品質不良、生産性の低下、売上不振など、原因が一つに絞りきれない状況で、考えられる可能性を幅広く検討したい場合に有効です。
- 具体的な使い方・実践ステップ:
- ステップ1:特性(結果)を定義する。 問題として扱いたい結果(例:「ウェブサイトからの問い合わせ件数が減少した」「製品Aの不良率が高い」など)を魚の頭部分に明確に記述します。
- ステップ2:大骨となる要因項目を設定する。 結果に影響を与えると考えられる要因をいくつかのカテゴリに分類し、大骨として図に加えます。一般的な分類としては「4M+1E」(Man:人、Machine:設備、Material:材料、Method:方法、Environment:環境)や「4P」(Product:製品、Price:価格、Place:流通、Promotion:販売促進)などがありますが、問題に応じて柔軟に設定してください。事業開発であれば「顧客」「商品・サービス」「競合」「社内体制」などが考えられます。
- ステップ3:中骨・小骨を追加し、原因候補を洗い出す。 各大骨に対し、「なぜその特性(結果)が起きているのか?」と問いかけ、考えられる原因候補を中骨として追加します。さらに中骨の原因に対して「なぜそれが起きるのか?」と問いかけ、小骨として詳細な原因候補を加えていきます。ブレーンストーミングなどを活用し、できるだけ多くの原因候補を洗い出すことが重要です。
- ステップ4:図全体を見渡し、重要そうな原因候補を検討する。 完成した図全体を眺め、どの要因が最も結果に影響を与えている可能性が高いかを検討します。必要に応じて、収集したデータや追加調査を行い、真の原因を特定します。
- ビジネスシーンでの活用事例:
- 特性(結果): 「ECサイトの離脱率が高い」
- 大骨の例: 人(顧客の行動)、方法(サイト設計・導線)、設備(デバイス・ブラウザ)、環境(ネットワーク状況)、商品(魅力度)
- 中骨・小骨の例:
- 人:操作方法が分からない → チュートリアル不足
- 方法:購入手続きが煩雑 → 入力項目が多い → フォームの自動入力ができない
- 設備:特定のブラウザで表示が崩れる → 互換性テスト不足
- 環境:スマホ利用時に表示が遅い → 画像ファイルが大きい
- 商品:商品情報が少ない → 写真が少ない、商品説明が簡素
- 図による整理後: これらの原因候補を整理し、データ(例:どのページでの離脱が多いか、どのブラウザでの離脱率が高いかなど)と照らし合わせ、特に影響の大きい原因を特定します。例えば、「購入手続きの煩雑さ」がデータで裏付けられれば、そこを重点的に改善します。
- 利点・欠点・注意点:
- 利点: 問題に関わる様々な要因を網羅的に洗い出し、視覚的に整理できるため、参加者間で問題の構造を共有しやすいです。複数人で原因を検討する際に有効です。
- 欠点: 原因候補を挙げる段階で網羅性に欠けたり、原因間の複雑な相互関係を表現しきれなかったりすることがあります。原因候補はあくまで仮説であり、その真偽は別途検証が必要です。
- 注意点: 大骨の分類は問題に合わせて適切に設定することが重要です。原因候補の洗い出しは、多様な視点を持つ複数のメンバーで行うと効果的です。完成した図は原因候補のリストであり、真の原因を特定するためには次のステップ(データ収集や検証)が必要です。
3. ロジックツリー(Logic Tree)
- 概要と目的: 問題やテーマを、論理的な MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive:漏れなく、ダブりなく)な構造で分解していくツリー状の手法です。「なぜ?」(原因追及)、「どうやって?」(解決策の検討)、「何を?」(要素分解)など、様々な用途で使われます。原因特定では、問題事象を論理的に要素分解し、どこに原因があるかを特定するのに役立ちます。
- どのような問題に適しているか: 複雑な問題の構成要素を分解し、原因がどこにあるかを特定したい場合に適しています。売上減少、コスト増加、プロジェクトの遅延など、全体的な問題の要因を論理的に構造化して考えたい場合に有効です。原因特定に焦点を当てる場合は「Whyツリー」とも呼ばれます。
- 具体的な使い方・実践ステップ:
- ステップ1:問題(トップ項目)を定義する。 解決したい問題、あるいは原因を特定したい事象をツリーの最上部(根元)に明確に記述します。
- ステップ2:トップ項目を要素分解する(第一階層)。 ステップ1で定義した問題に対し、「その問題は何で構成されているか?」あるいは「その問題はなぜ起きているか?」という問いかけで、MECEになるように要素を分解し、枝(第一階層)として記述します。
- ステップ3:さらに各要素を分解する(第二階層以降)。 第一階層で分解した各要素に対し、さらに同様の問いかけ(例:「その要素はなぜ起きているか?」「その要素は何で構成されているか?」)で要素分解を進め、枝を伸ばしていきます。この分解を、原因候補として検討するのに十分な粒度になるまで繰り返します。
- ステップ4:分解された要素を検証し、原因を特定する。 ツリー状に分解された末端の要素に対し、事実やデータを照らし合わせながら、どの要素が問題の主な原因となっているかを検証し、特定します。
- ビジネスシーンでの活用事例(Whyツリーとして):
- 問題(トップ項目): 「担当製品の市場シェアが低下している」
- 第一階層(原因分解):
- 競合製品に顧客が流出している
- 既存顧客からの継続購入が減っている
- 新規顧客獲得がうまくいっていない
- 第二階層(さらに分解):
- (競合製品に流出)→ 競合製品の方が価格が安い
- (競合製品に流出)→ 競合製品の方が機能が優れている
- (既存顧客からの継続購入減)→ 製品の不具合が多い
- (既存顧客からの継続購入減)→ サポート体制が不十分
- (新規顧客獲得がうまくいっていない)→ プロモーション費用が不足している
- (新規顧客獲得がうまくいっていない)→ ターゲット顧客への訴求が弱い
- 第三階層(さらに分解):
- (競合製品の方が機能が優れている)→ 競合は最新技術を導入している
- (ターゲット顧客への訴求が弱い)→ 顧客ニーズの変化を捉えられていない
- ツリーによる整理後: 例えば、「顧客ニーズの変化を捉えられていない」や「製品不具合の多さ」といった末端の要素がデータやヒアリングから原因として有力と判断されれば、そこに対して対策を検討します。
- 利点・欠点・注意点:
- 利点: 問題を構造的に、かつMECEに分解できるため、原因の漏れやダブりを減らし、全体像を把握しやすいです。論理的に思考を進める訓練にもなります。
- 欠点: MECEな分解は慣れが必要で、難しい場合があります。分解に時間がかかることもあります。分解した要素間の相互作用や複雑な関係性は表現しにくいです。
- 注意点: 分解の粒度をどこまで細かくするかを適切に判断することが重要です。分解に際しては、主観ではなく客観的な視点を持つように心がけてください。分解された各要素が、本当に問題の原因に関係しているかを検証する必要があります。
4. 3C分析(スリーシーぶんせき)
- 概要と目的: 事業環境を「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つの視点から分析するフレームワークです。事業戦略の立案に広く用いられますが、現状を体系的に理解し、問題の背景にある外的・内的要因を探るという点で、原因特定にも役立ちます。
- どのような問題に適しているか: 事業や製品・サービスの業績不振など、外部環境(市場、競合)と内部環境(自社)の両方から原因を探る必要がある場合に適しています。事業開発担当者が、担当事業の課題の原因を探る際などに特に有効です。
- 具体的な使い方・実践ステップ:
- ステップ1:Customer(市場・顧客)を分析する。 ターゲット市場の規模や成長性、顧客のニーズや購買行動、トレンドなどを分析します。
- ステップ2:Competitor(競合)を分析する。 主要な競合他社、その製品・サービス、強み・弱み、戦略、市場シェアなどを分析します。
- ステップ3:Company(自社)を分析する。 自社の強み・弱み、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)、企業文化、ブランド力などを分析します。
- ステップ4:3Cの分析結果を統合し、原因候補を検討する。 3つの視点からの分析結果を総合的に見直し、問題がなぜ起きているのか、その背景にある原因候補を検討します。例えば、「市場の変化(C1)に対して、自社の対応(C3)が遅れており、競合(C2)にシェアを奪われている」といった原因構造が見えてくる可能性があります。
- ビジネスシーンでの活用事例:
- 問題: 「担当事業の売上成長が鈍化している」
- Customer分析:
- ターゲット顧客の年齢層が以前よりデジタルに疎くなっている傾向。
- サブスクリプションモデルへの移行が進んでいる市場トレンド。
- Competitor分析:
- 競合A社は、デジタル弱者向けの丁寧なサポート体制を構築。
- 競合B社は、柔軟なサブスクリプションプランを導入。
- Company分析:
- 自社は、従来の訪問販売中心の体制から脱却できていない。
- 自社は、柔軟な料金プランを提供するためのシステム改修が遅れている。
- 3C分析結果の統合と原因候補:
- 市場のデジタル化やサブスク化といった顧客ニーズ・市場トレンドの変化(C1)に対して、自社(C3)が体制やシステムで対応できていないことが、競合(C2)との差別化に繋がり、売上成長鈍化の原因となっている可能性がある。特に、ターゲット顧客層の変化に対するサポート体制の遅れや、市場のサブスク化への対応不足が考えられる。
- 利点・欠点・注意点:
- 利点: 外部環境と内部環境の両面から体系的に分析できるため、問題の背景にある構造的な原因を捉えやすいです。事業全体や外部環境に起因する問題を検討する際に有効です。
- 欠点: 分析結果が多岐にわたり、どの要因が最も重要かの判断が難しい場合があります。分析の質は、情報の収集・分析スキルに大きく依存します。
- 注意点: 分析は「現在の状況」を正確に捉えることに重点を置きます。収集する情報は客観的で信頼性の高いものを選ぶことが重要です。分析結果から直接原因が特定できるとは限らず、他のフレームワークと組み合わせて原因を深掘りする必要がある場合もあります。
5. 5W1H分析(ファイブダブリューワンエイチぶんせき)
- 概要と目的: 問題事象や状況を「When(いつ)」「Where(どこで)」「Who(誰が)」「What(何を)」「Why(なぜ)」「How(どのように)」の6つの視点から整理する基本的な分析手法です。複雑な状況を整理し、事実関係を正確に把握することで、原因の手がかりを見つけるのに役立ちます。
- どのような問題に適しているか: 原因特定のための情報収集や状況整理の初期段階で、基本的な事実関係を明確にしたい場合に適しています。特定のトラブル発生時や、新しい課題に直面した際に、状況を構造的に把握し、原因の糸口を探るのに有効です。
- 具体的な使い方・実践ステップ:
- ステップ1:問題事象または対象を特定する。 分析したい具体的な問題事象や状況を明確にします。
- ステップ2:5W1Hの各項目について情報を収集・整理する。 ステップ1で特定した事象に対し、以下の問いかけで情報を収集し、整理します。
- When(いつ): その問題はいつ起きたのか? いつ発生しやすいのか?
- Where(どこで): その問題はどこで起きているのか? どの場所や部署で発生しているのか?
- Who(誰が/誰に): その問題は誰が関わっているのか? 誰に影響があるのか?
- What(何を): その問題は具体的に何なのか? 何が発生しているのか?
- Why(なぜ): (ここでは原因そのものではなく)なぜそれを分析するのか? 問題の背景や目的は何か?
- How(どのように): その問題はどのように発生したのか? どのような経緯や状況で起きているのか?
- ステップ3:収集・整理した情報を分析し、原因の手がかりを探す。 整理された5W1Hの情報全体を見渡し、異常な点、偏り、関連性などを探ります。例えば、「特定の時間帯(When)に特定の部署(Where)でエラー(What)が発生している」といった事実に気づくことで、その時間帯や部署の状況に原因があるのではないか、といった仮説を立てることができます。
- ビジネスシーンでの活用事例:
- 問題事象: 「カスタマーサポートへの同じ種類の問い合わせが増えている」
- 5W1Hで整理:
- When: 特に午前10時〜12時の間に集中している。新機能リリース後に急増した。
- Where: ウェブサイトのお問い合わせフォームからが多い。電話でも同様の問い合わせがある。
- Who: 新規ユーザーからの問い合わせが多い。
- What: 「〇〇機能の使い方が分からない」という内容の問い合わせ。
- Why: 問い合わせが増加した原因を特定し、サポート工数を削減するため。
- How: サイトのFAQやチュートリアルを参照しても解決できなかったユーザーが問い合わせているらしい。
- 5W1H分析結果からの原因候補:
- 「新機能リリース後(When)」に「新規ユーザー(Who)」からの「特定の機能に関する問い合わせ(What)」が「集中(When, Where)」していることから、新機能の分かりにくさが原因ではないか。特に、ウェブサイトやFAQだけでは情報が不足している(How)可能性が高い。→ 根本原因として、新機能のUI設計や、情報提供方法(FAQ、チュートリアル)に問題がある可能性がある。
- 利点・欠点・注意点:
- 利点: 問題の基本的な要素を網羅的に確認できるため、情報の抜け漏れを防ぎ、状況を正確に把握するのに役立ちます。シンプルで汎用性が高いため、様々な状況で活用できます。
- 欠点: あくまで事実関係を整理するツールであり、それ自体が直接的に根本原因を特定するわけではありません。深い原因や複雑な因果関係を掘り下げるのには限界があります。
- 注意点: 事実と推測を分けて整理することが重要です。「Why」はここでは「原因」そのものよりも「なぜ分析するのか」「背景にある意図は何か」といった目的を明確にするために使うことが多いです。深掘りはなぜなぜ分析など別の手法で行います。
フレームワークの使い分けと組み合わせ
ここまで原因特定に役立つ5つのフレームワークをご紹介しました。それぞれのフレームワークは、得意とする「原因の捉え方」や「適用する場面」が異なります。
- なぜなぜ分析: 一つの具体的な問題事象から出発し、原因と結果の因果関係を深く掘り下げたい時に有効です。
- 特性要因図: 考えられる原因候補を網羅的に洗い出し、構造を整理したい時に有効です。特に複数の要因が絡む場合に視覚的な整理に役立ちます。
- ロジックツリー(Whyツリー): 問題を論理的に構成要素に分解し、原因がどこにあるかを特定したい時に有効です。全体像をMECEに捉えたい場合に適しています。
- 3C分析: 事業の外部環境(市場・顧客、競合)と内部環境(自社)の両面から、構造的な原因を探りたい時に有効です。事業や製品単位の課題に適しています。
- 5W1H分析: 問題の基本的な事実関係を整理し、原因の手がかりとなる情報を網羅的に収集・把握したい初期段階で有効です。
これらのフレームワークは、単独で完璧な答えを出すものではありません。問題の性質や、原因特定の進捗段階に応じて使い分けたり、組み合わせて活用したりすることで、より効果的に原因を特定することが可能です。
組み合わせの例:
- 問題発生時の初期対応: まず5W1H分析で事象の事実関係を整理します。その後、考えられる原因候補を特性要因図で網羅的に洗い出します。
- 特定の事象の原因深掘り: 特性要因図で洗い出された原因候補の中から、特に重要と思われるものに対し、なぜなぜ分析でさらに深掘りし、根本原因を探ります。
- 事業課題の原因特定: 3C分析で市場、競合、自社の状況を把握し、問題の背景にある構造的な原因候補を洗い出します。その後、洗い出された原因候補のうち、特定の要素(例:自社のサービス力の弱さ)について、ロジックツリーでさらに構成要素を分解し、具体的な原因箇所を特定するといった連携も考えられます。
- 問題全体の構造理解: 全体的な問題をロジックツリーで論理的に分解し、各要素の現状を5W1H分析で確認する、あるいは特定の要素の原因をなぜなぜ分析で深掘りするなど、ツリーの各枝に対して他のフレームワークを適用することも可能です。
どのフレームワークを使うべきか迷う場合は、まず問題の「タイプ」と「目的」を考えてみてください。 * 原因が一つに絞り込めない、複数の要因が考えられる → 特性要因図 * 一つの具体的な問題事象の根源を探りたい → なぜなぜ分析 * 全体的な問題の構成要素を論理的に分解したい → ロジックツリー * 事業を取り巻く環境からの原因を探りたい → 3C分析 * とにかく状況を整理して情報収集から始めたい → 5W1H分析
そして、これらのフレームワークを組み合わせることで、多角的な視点からより正確な原因特定を目指すことができます。
フレームワークを効果的に活用するための心構えと実践のコツ
フレームワークはあくまで思考や情報整理を助ける「ツール」です。フレームワークを使うこと自体が目的ではありません。ツールを使いこなすためには、いくつかの心構えとコツがあります。
- 「完璧」を目指さない:まずは使ってみる 初めてフレームワークを使う時、「正確に使えるかな」「これで合っているのかな」と心配になるかもしれません。しかし、最初から完璧を目指す必要はありません。まずは簡単な問題から、ステップに沿って試しに使ってみてください。使っていくうちに、段々と慣れていき、自分なりの使い方が見つかるはずです。使わないことには何も始まりません。
- 事実に基づいて考える:推測や感情を混ぜない 原因特定においては、推測や思い込みではなく、客観的な事実に基づいて思考を進めることが極めて重要です。「なんとなく〇〇のせいだと思う」ではなく、「〇〇というデータがある」「実際に△△という事象が確認された」という事実を起点にフレームワークを使用してください。特に特性要因図やなぜなぜ分析では、事実に基づかない推測だけで進めると、見当違いの原因にたどり着くリスクがあります。
- 視覚的に整理する:図やシートに書いてみる 多くのフレームワークは、図やシートに書き出すことで視覚的に整理できます。頭の中で考えるだけでなく、実際に紙やホワイトボード、またはデジタルツールを使って書き出してみましょう。思考が整理されるだけでなく、新しい気づきが得られたり、複数人で共有しやすくなったりします。
- 一人で抱え込まない:チームで活用する 問題の原因は、自分一人の視点だけでは見えないことがあります。同僚や先輩、関係部署のメンバーなど、多様な視点を持つ人たちと一緒にフレームワークを使ってみましょう。ブレーンストーミングを取り入れながら特性要因図を作成したり、チームでなぜなぜ分析を繰り返したりすることで、一人では気づけなかった原因候補が見つかる可能性が高まります。
- 原因特定で終わらない:次のアクションに繋げる 原因を特定することは問題解決の重要なステップですが、そこで思考停止してはいけません。特定した原因に対し、「では、どうすればこの原因を取り除けるか?」「どのような対策が考えられるか?」と、次の「解決策の検討」に繋げていくことが重要です。
結論:今日から始める問題解決フレームワーク実践の第一歩
本記事では、業務課題の原因特定に役立つ代表的な問題解決フレームワークとして、なぜなぜ分析、特性要因図、ロジックツリー、3C分析、5W1H分析をご紹介しました。これらのフレームワークは、複雑な問題の原因を体系的に、論理的に、そして多角的に探るための強力なツールとなります。
あなたがもし今、「何が問題なのか、なぜうまくいかないのか分からない」という壁にぶつかっているならば、ぜひ今日からこれらのフレームワークを一つでも良いので使ってみてください。
例えば、目の前の小さな問題に対して、まずは5W1H分析で状況を整理してみる。なぜなぜ分析で「なぜ?」を5回繰り返してみる。あるいは、チームで集まってホワイトボードに特性要因図を描いてみる。
フレームワークは、あなたの思考を助け、問題解決のプロセスをスムーズに進めるための「頼れる相棒」となるはずです。繰り返し実践することで、原因特定だけでなく、あらゆる問題解決におけるあなたのスキルは確実に向上していくでしょう。
この記事が、あなたが問題解決スキルを身につけ、日々の業務で直面する課題を乗り越えていくための一助となれば幸いです。さあ、早速目の前の課題に対して、今日学んだフレームワークを一つ、実践してみてはいかがでしょうか。